取材・構成・文

ITジャーナリスト

大西高弘



昨今、「デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉がメディアを中心にさかんに使われるようになった。

 

これは何を指すのか。簡単に言ってしまえば、組織がさまざまなアプリケーションを開発、利用して、これまでの業務やサービスを飛躍的に効率化したり、新しいサービスを提供して大きな需要を生み出す、といったことになるだろう。この際、AIやそれに付随した深層学習、RPAなど先進的なテクノロジーが利用され、さらにAPIの活用によって、多くのユーザーが簡単にアプリケーションを開発したり、利用したりできるようになる。

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10月19日に開催された「Dell Technologies Forum 2018 Tokyo」では、このDXについて多くのスピーカーが言及したが、Dell EMC データ プロテクション部門 APJプリセールス 統括ディレクターのYeong Chee Wai氏は、「データ保護」の観点からDX時代に必要になることを語ってくれた。









まず前提となるのが、DXの時代というのは、本格的なアプリケーション活用の時代に入るということだ。これまで、手作業や簡易的なシステムで行ってきた業務をアプリケーションで実行することが増えてくる。1人の作業者がこれまで3つのアプリケーションで仕事をしていたとすれば、今後は、さらに多くのアプリケーションを活用して仕事をこなす時代になる。そうした時代になってどんな変化が起こるのかといえば、データ生産量のさらなる増大と、その管理の重要性が増す、ということだ。

実際、IDCでは、2025年までに生産される全世界の総量は163ゼタバイトにまで達するとしている。ちなみに2020年までの総量が44ゼタバイトなので、増加比率も2020年以降はかなり大きくなると予測されているわけだ。

 

Yeong氏は、「デジタル/IT革新を成し遂げる最後の重要ピース Dell EMCが提供する『データ保護革新』とは?」と題する講演の中で、DX時代にふさわしいデータ保護戦略について話を進めた。

 

●包括的なリスク管理ができるソリューションを選ぶ

 

Yeong氏は、これからのデータ保護について、データの量だけでなく保護方法の多様化について指摘する。


「まず、格納する場所です。各アプリケーションが生成するデータをどこに格納するかも方法は変わってきます。それは、オンプレミスのストレージとバックアップストレージだけに格納されるのではなく、アプリケーションが稼働している多様なプラットフォーム上に格納されることになるでしょう。それは、クラウド上かもしれないし、データセンターの中かもしれない。また、ハイパーコンバージドインフラなのかもしれないし、オンプレミスのアプライアンスなのかもしれない。さらにクラウドといっても、プライベートなのか、パブリックなのかということも選択されるようになります。また、新しいアプリケーションにどう対応するのか、ということも問題になります。例えば、NoSQLのデータベースに格納されたデータをどう保護するのでしょう。こうした課題に対しても、すぐに対応できるベンダーこそが、データ損失のリスクを低減できるのです」

 

さらにYeong氏は、データを格納しバックアップ作業を行う主体も多様化すると指摘する。


「データ保護に関しては、データベース、サーバなどの各担当者がそれぞれ行うケースが増えています。つまりデータセットのオーナーがIT部門の中枢から、各現場へと分岐していっている。さらに一般の業務部門のユーザーがオーナーになるケースもある。こうした状況では、例えばバックアップインフラの構築については、担当者がセルフで自由にできるようにすることが求められるようになります」

 

こうした状況の変化に伴い、データ保護は、包括的にリスクを監視しながら行えるようなものでなくてはならないと、Yeong氏は指摘する。つまり、ある分野のデータ保護だけに特化したベンダーのソリューションを複数使い分けることは、もはや時代にそぐわなくなっているという。

 

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「複数のベンダーの製品を使い分けていた場合、データ損失のリスクが高くなることは、もはやはっきりしています。どんなプラットフォームでも、アプリケーションにでも対応し、基幹システムからエンドポイントまで、さまざまな階層で生成されるデータを包括的に保護することができるベンダー1社を選ぶべきです。Dell EMCはDX時代にふさわしい、包括的なデータ保護ソリューションを目指しています」

 







●アプライアンスをクラウドサービスとして提供する


Yeong氏は「包括的なデータ保護」に必要な柔軟な対応力について解説する。


「当社の製品、サービスはアプライアンスとしてクラウド対応しているだけでなく、クラウド上でサービスとして活用することにも注力しています。ハードウェアを購入して自社で組み立てていくというお客様にも製品を提供する一方で、ハードウェアで提供している機能を、クラウド上のマーケットプレイスで購入し活用することもできるのです。例えば、当社のバックアップ用ストレージであるDell EMC Data Domainは、クラウド上でのサービスとして利用できます」

 

Data Domainは、高い重複排除機能を持つ、人気製品だが、Dell EMCでは早くから、クラウドでの利用を想定し、ハードだけの提供にこだわることなく、サービス化させている。ユーザーのニーズを先取りし、ユーザーにとってもっとも使いやすいスタイルでの提供を実現させている。

 

Data Domainは、「データ保護の最後の砦」となるよう開発された製品である。データを損失させてしまったユーザーが最後の最後に頼りとするストレージとして開発された。この製品では、複数ディスクの多重障害時に対する冗長性を確保しているだけでなく、常にデータが正確に書き込まれたかをチェックする独自の保全機能を持つ。また、ブロックごとのチェックも行うように設計されている。

 

こうした製品も「クラウド上で活用したい」というユーザーが現れることを先取りし、サービス化させている。Yeong氏がいう「包括的なデータ保護」を提供するベンダーとは、こうしたことを指すのだろう。

 

Yeong氏は「もう、多くのITユーザーは、事前にバックアップインフラに対してお金を払うということをよしとしない。優れた機能やサービスでも、使った分だけ対価を払い、不要になれは、それ以降はコストが発生しないというのが当たり前になっている」と話す。

 

つまり、こうしたユーザーの変化に即時に対応できるベンダーこそが、DX時代にふさわしい企業だといえるのだ。アプライアンスとしてバックアップストレージを購入したユーザーが、時間経過に伴って、クラウド活用を積極的になっていったとき、最適なソリューションを提供できるか、そこがポイントとなる。

 

●高機能の製品で、バックアップコストを最適化

 

また、この対応力は「人的にもITリソースの薄いユーザーが、的確なデータ保護を行える」という点でも生かされている。IDPA(Integrated Data Protection Appliance)は、その代表格だろう。

 

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この製品には、データ保護を実行する上で必要な機能をすべて格納したコンバージドインフラ製品だ。クラウドとの連携機能もあり、設定も数時間で完了できる。DXがさらに本格化すれば、小規模な組織やスタートアップ企業でも、管理しなくてはならない重要データが飛躍的に増大してくる。その際、こうしたコンバージド型の製品が大きな力を発揮してくれる。

 

  







「これまで、DR(災害対策)サイトは大きなコスト負担が課題でした。しかし、いまはクラウドにデータをコピーして簡易的なDRサイトを簡単に構築できるようになりました。しかし、その際、本当にいざという時にクラウドからデータを引っ張り出して、事業の継続性を維持できるのかが気になります。当社のIDPAなら、そのような心配をする必要はありません。これは多くの導入ユーザーも認めるところでしょう」とYeong氏は話す。

 

さらに、クラウドでのバックアップ活用のコストについてもYeong氏は次のように指摘する。

 

「パブリッククラウドでバックアップを行うことのみが、必ずしもコストを最適化できるとは限りません。バックアップデータをリストアする際や、スナップショット作成のコストはそれほど安価ではないのです。そこで当社では、クラウドのデータストアに、サーバを介することなくデータを送る仕組みを提供しています。また、付け加えると、バックアップデータの総量、あるいは一回のバックアップの大きさによっては、1台のData Domainでバックアップしている方が、コスト的には安い、というケースもあります。Data Domainの重複排除率は、平均で30分の1です。これだけ高効率の排除率であれば、ケースによってはクラウドを活用して、新たなコストを負担しないほうがいいという判断もできます」

 

VMwareとの高い親和性でさらに効率的にデータ保護

 

VMwareは、Dell EMCと一体化したベンダーである。そのため技術的な連携が常に図られており、バックアップソリューションにおいても同様の取り組みが継続されている。

 

VMwareの仮想環境でバックアップをする際、当社の製品を活用することで、重複排除率は72分の1となります。この驚異的な能力は、クラウドやその他の環境でバックアップデータを格納する際、大きなコスト低減を現実化させます」とYeong氏は話す。

 

また、まもなく「VMware Cloud on AWS」が日本でも提供される。このサービスは、AWSの仮想化基盤上にVMwareの仮想マシンを入れるのではなく、AWSのデータセンターにあるベアメタルのインスタンスに搭載するというものだ。とくにプライベートクラウドでVMware環境を利用していたユーザーにとっては、利便性を損なうことなく、パブリッククラウド上で低コストに多様なIT活用が可能になる。

 

パブリッククラウドの活用では、データ保護はユーザーの責任で行わなくてはならない。Dell EMCは、「VMware Cloud on AWS」の戦略的なパートナーとして世界で最初に指名され、データ保護ソリューションを順次提供し始めている。その中には、「as a service」として提供するものもあるという。「VMware Cloud on AWS」を利用すると同時に、サービスとしてデータ保護機能を購入し活用することになる。

 

   

 

ここまで、Yeong氏の解説を聞いていて感じたことは、「包括的なデータ保護サービス」とは、ソリューションの提供形態が多様に用意されていることが、必須の条件になるということだ。システムのあらゆる階層で保護が可能であることも重要だし、ギガバイト当たりのコストも着目すべきだが、それでも、ニーズに合わせた機能提供を、アプライアンス、SaaS、ソフトウェアなどあらゆる形態で実行できる企業であれば、ユーザーは自社の事情に合わせて、最適な方法を選ぶことができるだろう。

 

また、Yeong氏は、最適で自動化された保護ソリューションを活用することで、IT人材がバックアップやデータ保護にかかわる時間や手間を大幅に減少させることができると指摘する。IT予算はそれほど増えない中でも、データ保護コストを低減させ、IT人材の時間も確保することで、アプリケーション開発に注力することが可能になるということだ。これこそ、まさに「DX時代のデータ保護戦略」の根幹といえるものだろう。


 

 

Yeong氏が講演にて解説した様々な製品・ソリューションはSolution Expoにも展示され

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注目の最新コンバージドインフラ「DP4400」には多くの方が足を止め、説明を聞いていた。


 

 

 

 

 

 

 

 





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【シリーズ:新時代のデータ保護】

1回:DellEMCDNAを融合させたData Domainシリーズの最新版「Data Domain DD3300」の魅力とは?

2回:最新のデータ保護アーキテクチャを適正なコストで構築するための秘訣

3回:今後、データ保護ルールの新デファクトスタンダードになる可能性もあるEU一般データ保護規則(GDPR)

4回:サイバー対策の最新トレンド「サイバー復旧」とは何か?

5回:Dell EMC、データ保護コンバージドアプライアンス「IDPA」のエントリーモデル「DP4400」を提供開始 シンプルでパワフルなデータ保護機能をより身近に

6回:今後拡大が見込まれる「パブリッククラウドを活用したデータ保護」ユーザーが留意すべきポイントとDell EMCデータ保護の戦略

第7回:【特別編】Dell Technologies Forum 2018 – Tokyo イベント特集 パート1:デジタルトランスフォーメーションを支えるデータ保護の重要性